日記1

どうしようもなくなって、身の回りのものを目につくものからどんどん捨てていった。高校の時にすごく好きだった友達から借りたままの漫画やCDも、もう二度と会わないだろうし連絡先も知らないしいいかと思ってゴミ袋の中に突っ込んだ。

高校2年の時に始めて彼女の家に行ったとき、私は押し入れの中に詰め込まれた漫画を読み、彼女は色の濃い麦茶を飲みながらギターを弾いていた。古い団地の女子高生とは思えない殺風景な部屋で、何故か安心したのを覚えている。高校卒業後一度だけ会い、餃子を食べながらその時好きだった男の子やバンドや漫画についてポツポツ話し、さよならは言わずに別れた。帰り際「あなたと過ごす時間がすごく好き」だと言われ、私もだと伝えたけれど彼女とはそれっきりになってしまった。数年前にフェイスブックで都内のダーツバーで働いていることを知ったけれどどうしても連絡できず、いつの間にか彼女が今どこで何をしているのか分からなくなっている。借りたままの漫画もCDもあの部屋で過ごした時間がいつまでも流れている気がして開くことすらできなかったけど、記憶がどれほど優しくても日々の生活より大切なものなんてないと気づいてしまった。というか、やっと気づいた。私は私の生きやすさや生活のためにあの時間を捨てる。今の自分には優しすぎるから。